免疫のしくみ

 免疫系の兵隊は白血球。白血球の中で、バクテリアに対抗するのがB細胞で、これが白血球の約5%を占めます。自己、非自己を認識するのはT細胞とサプレッサーT細胞で、それぞれ白血球細胞の50%、20%に当たります。一方体内に侵入した異物を食べてしまうのはマクロファージです。

 しかし、「ガンに対する免疫」は、その存在自体が長く疑問とされてきました。それはガン細胞が、細菌やウィルスのような外部から侵入してきたものではないこと。身体の一部であった細胞が、何らかの原因で変質したものであり、元々異物ではないためです。従って免疫組織はガン細胞を異物として発見することができないのではないか、体内でガンに対する免疫は働かないのではないかとする考え方があったのです。しかし、臓器移植の際に起こる拒絶反応の研究から、道は開けていきました。この反応を詳しく調べると、激しく活動していたのが血液中のリンパ球だったのです。

 リンパ球こそ、体内の免疫反応の中心的存在です。それは外部から侵入してきた異物だけでなく、体内で発生するガン細胞にも反応することがわかったのです。

 リンパ球は、大別してB細胞とT細胞に分かれます。またT細胞は、さらに「ヘルパーT細胞」「サプレッサーT細胞」そして「キラー細胞」とに分かれています。そしてこの「キラー細胞」の一種が、NK細胞なのです。

 このNK細胞がガンに対抗し、白血球の10%程度を占めています。活性化したNK細胞は、ガンと接触するとガン細胞に粒子(パァーホレン)を打ち込み、5分以内にガン細胞を殺してしまいます。

 恐ろしいのはガン細胞がこのNK細胞を攻撃することです。ガン細胞がNK細胞を取り込み、食して消化してしまう現象を報告しています。さらにガン細胞は、攻撃するだけではなく抑制物質を出すことでNK細胞の活性を妨げることもあります。

 ただしこれらの免疫細胞は、それぞれが独立した働きをするのではありません。その一部は異物を捜し出し、一部は戦略を立て、その指令を受けて一部が実際に攻撃、排除するのです。

 免疫治療はこうした体内でのリンパ球の働きを助けたり、活性化させたりして、がん細胞への攻撃を促すもので、直接がん細胞を攻撃するものではありません。それだけにある意味、患者の持つ個体差やがんの進行具合に影響を受けるのでしょうが、うまくいったときにはかなりの効果でる場合も少なくないようです。ただ、リンパ球の活性化の方法は千差万別。それこそ日夜、研究、臨床が続いていると言えるでしょう。