ガン発生のメカニズムについては戦後さまざまな形で研究がされてきましたが、特にここ10年間で飛躍的な進歩を遂げ、ある一定の成果が挙がっているようです。

 ここに書き記すことは私の読みかじりの範囲で、専門用語を使わずに説明してみたいと思います。素人の解釈で、間違っていることもあるかもしれませんので、もし専門家の方が見られて間違いがありましたら指摘していただければ幸いです。

 いったいどうしてガンが起こるのでしょう。一般的に知られているものはタバコや排気ガス、化学物質などのいわゆる発ガン性物質です。またそれに付随した無節操な生活習慣もあげられるかもしれません。しかし、実際にはそれだけではなく、こういった原因が何も見られない人(たとえば小児ガンや若年のガン)もガンにかかってしまいます。どうしてこんなことになるのでしょうか。

 さてここで一つ皆さんに作業をしてもらいましょう。いいですか。それでは今から1〜10までの数字を書いて下さい。1,2,3...10。ちゃんと書けましたね。ではこれを一万回繰り返してください。どうなりますか。もしやり遂げたとしてすべてを間違いなく書き終えることはできるでしょうか。どこかで2が抜けたり、9と書いたつもりが7になっていないでしょうか。ありえる話ですね。

 人の体の中では毎日無数の細胞が死に生まれ変わります。一生のうちで一京回(10の16乗)の細胞分裂を繰り返すそうです。ミスがない方がおかしいですよね。DNA内の塩基配列のただ一箇所に書き間違えを生じることで、ガン発生のスイッチはオンになるのです。でも、人間の体はうまくできていてこういったミスが起きてもそれを修復する機能を備えています。しかしながら、何らかの原因でこのミスが見過ごされるとその細胞が分裂を繰り返し次のミスを誘発します。こうして何段階かのミスが繰り返されることで、ガン細胞へと変異することになるのです。

 それゆえ、ガン細胞に変化するまでには最初のミスが起こってから、10年くらいかかるようですが、ひとたびガン細胞に変化すると爆発的なスピードで増殖します。正常な細胞ならガン抑制遺伝子が働き、分裂する時もきちんとチェック機能が働く上に分裂する回数も限られています。しかし、ガン細胞は無限に細胞分裂を繰り返すのです。